

兵庫県住宅供給公社証人の証言の吟味(ぎんみ)をつづける。
証人は「(委託事務費は)駐車場の維持管理のための事務費、通信費、交通費等に使われます。余った残高は、自治会全体の費用になります。」とのべている。
しかし、自治会費になるような委託事務費の「余った残高」などというものはどこにも存在しない。
証人は同じ趣旨で「余剰金」ということばを別の場所で使っているが見当ちがいもはなはだしい。意図的な詭弁か、でなければ短絡的な錯覚である。

上記契約書を見ればあきらかである。
事務費(c)、すなわち委託事務費(b)は「委託業務(a)の遂行」と一対一で対応している。文字どおり「委託業務の遂行」の対価だ。
国語辞典などによれば、委託業務の委託とは「法律上のある行為の実行や事務の取り扱いを人に依頼すること」とある。
つまり委託事務費(b)は 委託業務の遂行そのものたいする対価であり、業務の実施にともなって発生する間接経費のことではない。
したがって、上記第4条の事務費(c)が 委託業務の遂行にともない付随的に発生する通信費などの間接経費だけをことさらに選(え)りだしたものでないことは明白である。
一方、証人の言う事務費は上記証言の文脈からわかるように第4条の事務費(c) の下位分類項目である間接経費のことだ。つまり証人は「委託業務を遂行するための事務費」をかってに曲解しこれを「委託業務を遂行する過程で発生する間接経費」に矮小化してスリカエているのである。
通信費などの間接経費が対価(委託事務費)の一要素つまり二次的経費なら、それらは委託業務が遂行されないかぎり発生しえない費用である。
つまりこの事務費は証人によって間接経費に矮小化されているがその費用形態は見かけ上のものだ。生身の人間の労務作業を媒介としてはじめて現象するのである。
いっぽう「余った残高」とは この生身の人間の労務作業を証人がアタマの中で捨象した結果生じた観念(妄想?)にすぎない。人間の労務作業には対価が必要だが観念や妄想にコストはかからないのである。
すると事務費と称する証人の間接経費も労務作業のかわりに証人のアタマの中を媒介として生まれたオカルト現象ということになる。
間接経費は委託事務費に含まれる、
そして委託事務費は委託業務の遂行をへて実体化するのである。
つまり委託業務の遂行と委託事務費(および間接経費)の関係は親子関係が前後の項(親と子)を交換すると成り立たないように、前者が先行して後者が発生する反対象的関係である。両者の先後関係を入れ替えることはできない。
しかし証人の「余った残高」は論理が転倒している。
間接経費の発生が委託業務の遂行に先行し、そこから時計の針を逆に回してまだ実体のない委託事務費からそれを恣意的に差し引いて計上したものだ。
逆行しているのは物理的時間ではない、論理的脈絡である。これは論点先取りの誤謬、まさにオカルト的詭弁だ。
蛇足になるが委託業務遂行前の委託事務費は委任者側の支出科目名である。契約書における単なる文字の羅列、ポテンシャルにすぎない。いっぽう委託業務の遂行をへて発生する委託事務費は受任者側にとって実体としての対価だ。
通信費等の間接経費はこの実体としての委託事務費に含まれ、ポテンシャルとしての委託事務費における間接経費は可能性としての存在でしかない。
証人の「事務費、通信費、交通費等」が実際に発生した経費なら、それらを差し引いた残高はやはり実際に発生した委託業務遂行の対価の残高であるはずだ。ここには「余った残高」が発生する余地などはない。だが論理的節度を欠く証人の証言は支離滅裂である。
つまりこの間接経費(事務費)を差し引いた「余った残高」という証人の証言は可能性と実体(現実)の次元を交錯した矛盾、ポテンシャルとしての委託事務費から実体経費を差し引いてひねり出された空虚な皮算用(かわざんよう)にすぎない。
「余った残高」とは委託事務費の残高(対価)と同名を騙(かた)る出自不詳のアウトローなのである。
要するに間接経費を差し引いた委託事務費(いわゆる証人の言う「残高」)こそが狭義(正味)の委託業務遂行の対価だ。
しかし委託業務を無償のボランティアと吹聴する証人の非常識が間接経費のオカルト現象を副産物としてこのあたり前の理解をはばんでいるのである。
この狭義の委託事務費(対価)を称して証人はズサンにも「余った残高」としているが、これと間接経費を含む広義の委託事務費とのあいだに本質的な「差異」はなにも存在しない。ちがいは二次的経費を含むか含まないかである。
兵庫県住宅供給公社の証人は広義の委託事務費から狭義のそれを差し引いた間接経費だけをことさらに強調し、これを第4条の「前条の委託業務を遂行するための事務費(c)」であるかのように詭弁を弄しているだけである。
あるいは証人は、証人の言う事務費は間接経費ではない、第4条の事務費(c) だと主張するかもしれない。それなら「事務費(c)すなわち委託事務費(b)+間接経費」を委託事務費(b)から差し引くという奇態な計算を強いられ「残高」はマイナスの計上となる。
この矛盾を回避するには間接経費を差し引いた委託事務費の残高を二分し、その一方を労務提供費としての事務費とすれば冒頭の証言の辻つまは合う。
つまり労務提供費(対価)の矮小化と引き換えに「残高」が計上できるというわけだ。しかしそんな姑息(こそく)な弁解では上記証言の矛盾撞着はすこしも解消されないのである。
要するに第4条の「前条の委託業務を遂行するための事務費は、月額○○円とする。」とは「委託業務の遂行の価値を月額○○円と定める」という約束にほかならない。
証人の「余った残高」とは、この「委託業務遂行の価値」を定めた約束(契約)の不履行宣言にひとしい。
これは証人単独の恣意によるものかあるいは兵庫県住宅供給公社の意図なのかを問うているのである。
証人は「余った残高は、自治会全体の費用になります。」とのべているのだから契約の不履行には当たらないと弁解するかもしれないが、自治会は任意団体(権利能力なき社団)であって「委託業務遂行の対価」の帰属主体ではない。
おためごかしの自治会擁護論は警戒を要する。例の役員某の野心を隠ぺいした偽善的追従(ついしょう)とおなじだ。
証人は証言の中で委託事務費が自治会費となる証拠として提出した「住まいのしおり」を根拠として、委託事務費は「定期的な清掃費などに使用すると読めますが、そのとおりです。」と手前ミソをのべている。が、定期的な清掃費とはあとにもふれるとおり自治会側から公社へ要請する土手の「草刈費用」のことだ。
また証人はべつの場所で、委託事務費を駐車場関連の工事費用とすることは「自治会が委託業務をよりリッパに遂行するため」だと公言している。これが実現して「黄線引き工事費用」がST団地自治会の委託事務費から不当に流用されたのである。
議論を整理する。
(狭義の)委託事務費 + 間接経費=(広義の)委託事務費(A)
上記 (A)式左辺の委託事務費は業務遂行の結果として発生した委託事務費であり右辺は遂行前のポテンシャルとしての委託事務費である。
この式を移項すると、
(狭義の)委託事務費=(広義の)委託事務費 - 間接経費(A')
となる。この(A')式の右辺は、左辺の実体としての委託事務費の存立根拠(原因)である。
右辺の(- 間接経費)は委託業務の遂行の結果「間接経費が発生した」ことを意味している。つまり(A')式の(- 間接経費)とは「委託業務の遂行」と同義なのである。
要するに(A')式は、委託業務の遂行(右辺)によって狭義の委託事務費、実体としての対価(左辺)が発生したことの証明である。
これでH証人の「委託事務費 - 間接経費 = 残高(自治会費)」論の荒唐無稽が明らかになった。
端的に言えば委託業務(の遂行)はコインの表、委託事務費はコインのウラである。表だけのコインもウラしかないコインも現実には存在しない。通信費等の間接経費はそのコインのウラのひとつの模様にすぎない。
第4条の事務費(委託事務費)と 証人の事務費はその存立レベルが異なる。これら同名を騙(かた)るコトバのすりかえで本来あるべき「差異」をゴタマゼにした結果、事務費等を差し引いた委託事務費の「残高」などというありもしない妄想が独り歩きをはじめるのである。
これで、委託事務費の「余った残高」とやらが、
幽霊の正体見たり枯れ尾花 
証人の妄想の産物にすぎないことがわかったはずである。
兵庫県住宅供給公社の証人は「裸の王様」のイカサマ裁縫師よろしく、ありもしない「残高」を身振り手振りで演出して対価という衣装を王様から剥(は)ぎ取ろうという魂胆らしい。
